Created by
Terms in this set (73)
問4
売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。(2009-問8-3)答え:誤り
契約が解除された場合の売主の「原状回復義務」と買主の「原状回復義務」は同時履行の関係にあります。
つまり、契約解除されることで、売主は「受領した代金+利息」を返還する義務を負い、買主は、「甲土地および甲土地を利用した利益部分(例えば土地の利用料)」を返還する義務を負います。この両者の債務は同時履行の関係にあります。問5
AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行させることとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。(2006-問8-1)答え:正しい
履行の提供をすると、相手方の同時履行の抗弁権を失わせることができ、債務不履行を主張できます。
したがって、「Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかった」ということは、買主Bは債務不履行に陥っています。したがって、Bは履行遅滞(債務不履行)となり、遅延損害支払債務を負います。問6
Aが、平成4年8月、Bに土地を賃貸し、Bがその土地上に建物を所有している場合、Bが適法にAに建物買取請求権を行使すると、その所有権は直ちにBからAに移転するが、BはAが代金を支払うまで、建物の引渡しを拒むことができる。(2002-問13-4)答え:正しい
建物買取請求の場合も、代金と建物の引渡しは同時履行の関係に立つ。「借地権者Bの建物の引渡し債務」と「借地権設定者Aの代金支払債務」は同時履行の関係になるので、借地権設定者Aが代金を支払うまで、借地権者Bは建物の引渡しを拒むことができます。(危険負担) 問1
平成19年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し、当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払と引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨の合意がされていた。甲建物が同年9月15日時点で自然災害により滅失しても、AB間に「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまでは売主が負担する」との取決めがある場合、Aは甲建物を引き渡す債務を負わず、Bは、代金の支払いを拒むことができる。(2007-問10-4)答え:正しい
「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまでは売主が負担する」との取決めは、民法の原則通りです(民法567条1項前段)。もちろん、この取決めは、有効です。したがって、売主Aは甲建物の引渡債務を負いませんし、買主Bは代金の支払いを拒むことができます。問2
平成19年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し、当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払と引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨の合意がされていた。甲建物が同年9月15日時点でBの責に帰すべき火災により滅失した場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。(2007-問10-3)答え:誤り
売買契約締結後、引渡し前に、買主の責に帰すべき火災により、売買の目的物が滅失した場合、買主が原因で引渡ができないので、買主は代金を支払わなければなりません。問3
平成19年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し、当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払と引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨の合意がされていた。甲建物が同年9月15日時点でAの責に帰すべき火災により滅失した場合、有効に成立していた売買契約は、Aの債務不履行によって無効となる。(2007-問10-2)答え:誤り
売買契約締結後、引渡し前に、売主の責に帰すべき火災により、履行が不能になったとしても、契約が無効となるわけではない。 売買契約がAの債務不履行によって、無効となるのではなく、Aは債務不履行の責任を負うことになる。具体的には、買主Bは契約の解除もできまるし、損害賠償請求もできる。問4
平成19年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し、当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払と引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨の合意がされていた。甲建物が同年8月31日時点でAB両者の責に帰すことができない火災により滅失していた場合、甲建物の売買契約は有効に成立する。答え:正しい
甲建物が滅失したのは、契約締結(9月1日)前の8月31日であり、原始的不能の問題です。この場合でも、契約は、有効に成立します(民法412条の2第2項参照)。
※令和2年の民法改正で変更された点です。
つまり、「存在しない建物についても売買契約を締結することができる」ということです。(損害賠償請求) 問1
債務の不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する旨は民法の条文に規定されている。(2015-問1-1)答え:正しい
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1:債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
2:権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、例外的な扱いがされます。この場合、客観的基準による時効期間は20年間です(同法167条)。問2
不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。(2014-問8-2)答え:誤り
遅延損害金債権についても、不法行為に関する期間制限の規定が適用されます。つまり、時効期間は「不法行為の時から20年」です。本肢は、時効期間を「債権が発生した時から10年間」とする点が誤りです。問3
不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条における、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識したときをいう。(2014問8-1)答え:正しい
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は
①被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年。
(生命・身体の侵害による損害賠償請求権は5年)
②不法行為の時から20年を経過した場合も損害賠償請求権は消滅します(この20年を除斥期間という)。
そして、①の「被害者が損害を知った時」とは、判例で「被害者が損害の発生を現実に認識したとき」としています。
したがって、本問は正しいです。
今回は特別に具体例を挙げてみます!
例えば、報道による名誉毀損について考えましょう。
ニュースを見ている方は身近なことなので分かりやすいと思います。
報道で名誉棄損を受けた場合、被害者がその報道(テレビや新聞、週刊誌)などを見なければ、数日間、名誉棄損を受けていることを認識していないことがあり ます。その後、知り合いから「こんな記事が報道されているよ!」とうわさを聞いて初めて損害の発生を認識することになります。
このような場合、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきと判例では言っています。問4
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが瑕疵の存在に気づいてから1年以内である。(2014-問6-3)答え:誤り
Cが「瑕疵の存在に気付いてから1年以内」と言うのは、瑕疵担保責任に基づく、時効期間です。記述は、不法行為責任に基づく損害賠償の時効期間を、訊いているのです。不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害者Cが損害及び加害者を知った時から3年です。
また、不法行為の時から20年を経過した場合も損害賠償請求権は消滅します(この20年を除斥期間という)。問5
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、当該瑕疵によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。(2014-問6-2)答え:正しい
居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵(建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵)がある場合、注文者Aだけでなく建物の買主Cも、建築業者Bに対して、不法行為による損害賠償請求ができます。これは、平成19年の判例です!問6
買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。(2014-問3-3)答え:正しい
判例によると、買主の売主に対する瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は、目的物の引渡後10年で消滅時効によって消滅するとしています。
つまり、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行するということです。問7
AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。(2012-問8-3)答え:正しい
BがAに売り渡した後に、BがCにさらに同じもの売った場合です。これは二重譲渡ですね。
BはAに甲土地を引渡す義務が生じます。しかし、Cが登記してしまっているため、Bは約束通りAに土地を引渡すことができません。
つまり、Bは履行不能(債務不履行)ということです。
債務不履行の場合、相手方は損害賠償請求ができます。問8
両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。(2010-問6-3)答え:正しい
判例では、履行不能による損害賠償義務の消滅時効は本来の債務の履行を請求し得る時から進行を始めます。問9
両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、賠償請求できる。(2010-問6-1)答え:誤り
通常事情によって生ずべき損害については、予見していたものだけでなく、予見していないものも損害賠償請求できるので本問は誤りです。問10
売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して損害賠償を請求することはできない。(2009-問8-4)答え:誤り
本問の場合、契約してから原状回復の履行時までの間に甲土地の価格が下落することで売主は損害を被っています。契約解除したからといって併せて損害賠償請求ができないというルールはないので、売主Aは買主Bに対して債務不履行(賃料不払い)に基づく損害賠償請求も行えます。契約解除に伴って損害が発生すれば、その分を請求することは一向に構いません。(損害賠償額の予定) 問1
AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって、AがBに対して、損害賠償請求をする場合に関して、裁判所は、賠償額の予定の合意が、暴利行為として公序良俗違反となる場合でも、賠償額の減額をすることができない。(2002-問7-3)答え:誤り
原則は、賠償額の予定がある場合、裁判所といえどもその額を増額したり減額したりすることができません。 しかし、賠償額の予定条項が暴利行為(相手の財産を奪い取るような行為)にあたる場合には、善良の風俗に反する(社会的秩序や道徳に背くと認められる行為)限度において無効となり、裁判所は賠償額の減額ができます。 簡単に言えば、3000万円の土地の売買契約で、損害賠償の予定額が1億円というような金額した場合、一部無効となるわけです。
増減をすることができるのが、暴利行為にあたる場合に限られるわけではない。
※令和2年の民法改正による変更点である。問2
損害賠償額の予定は、契約と同時にしなければならない。(1990-問2-2)答え:誤り
損害賠償額の予定をする時期について、特に制限はありません。 したがって、「契約と同時」にする必要はないです。損害賠償額の予定を定める時期については、特に規定されていませんので、契約の後に定めても構わないとなります。問3
損害賠償額の予定は、金銭以外のものをもってすることができる。(1990-問2-3)答え:正しい
「金銭でないものを損害賠償に充てる」旨の損害賠償額の予定も可能です。問4
損害賠償額の予定をした場合、債権者は、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても予定額を超えて請求することはできない。(1990-問2-4)答え:正しい
判例では、損害賠償額の予定をした場合、債権者は債務不履行があったことを主張・立証すれば、予定した損害賠償額の請求ができる、としています。
この場合、損害の有無・多少を問わず、予定の賠償額を受領することができます。
ただし、実際の損害額が予定額より大きいことを証明したとしても、予定額を超えて請求することはできません。逆に、実際の損害額が予定額より小さくても予定額を請求できます。(契約解除) 問1
賃借人の債務不履行を理由に、賃貸人が不動産の賃貸者契約を解除するには、信頼関係が破壊されていなければならない旨は民法の条文に規定されている。(2014-問1-1)答え:誤り
民法は、賃貸借契約の解除理由につき、特別な条文を設けていません。したがって、契約の一般原則通り、債務不履行があった場合には、契約を解除できることになります。これに対し、判例は、賃貸借契約を解除できるケースを限定しています。信頼関係が破壊されていない限り、契約を解除することができない、と解釈しているのです。
上記例は民法の条文には規定されていない判例です!問3
売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。(2009-問8-3)答え:誤り
契約が解除された場合の売主の「原状回復義務」と買主の「原状回復義務」は同時履行の関係にあります。
つまり、契約解除されることで、売主は「受領した代金+利息」を返還する義務を負い、買主は、「甲土地および甲土地を利用した利益部分(例えば土地の利用料)」を返還する義務を負います。この両者の債務は同時履行の関係にあります。問4
売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。Bは、甲土地を現状有姿の状態でAに返還し、かつ、移転登記を抹消すれば、引渡しを受けていた間に甲土地を貸駐車場として収益を上げていたときでも、Aに対してその利益を償還すべき義務はない。(2009-問8-2)答え:誤り
契約解除が行われると、両者は原状回復義務を負います。
つまり、本問の場合、売主は、受領した代金に利息をつけて返還し、買主は甲土地と甲土地から得た利益(貸駐車場として収益)を返還しなければなりません。問5
所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地の売買契約に関して、EはBとの間で売買契約を締結したが、BE間の売買契約締結の前にAがBの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた場合、Aが解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、Aは所有者であることをEに対して主張できる。(2008-問2-3)答え:誤り
「BE間の売買契約締結の前にAがBの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除していた」という記述から、「AB間の契約解除」の後に「BE間の売買契約」があるからEは「解除後の第三者」です。
解除後の第三者とAとの関係は、Bを起点として二重譲渡の関係になり、登記を備えたほうが所有権を対抗できます。
したがって、「Aが解除した旨の登記をしたか否かにかかわらず、Aは所有者であることをEに対して主張できる」という記述は誤りです。AがEに所有者であることを主張するには、Aは解除した旨の登記が必要です。問6
不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約を適法に解除した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。(2007-問6-2)答え:正しい
解除の場合、解除前に第三者が現れても、解除後に第三者が現れても先に登記を備えたほうが勝ちます。
解除についてはこのルールだけ覚えておきましょう。
つまり、売主が第三者に所有権を対抗するためには、先に「解除による所有権の登記」を備えておく必要があります。問7
買主が、売主に対して手付金を支払っていた場合には、売主は、自らが売買契約の履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、手付金の倍額を買主に支払うことによって、売買契約を解除することができる。(2005-問9-4)答え:誤り
買主が履行に着手している場合、手付金の倍額を返しても、売主は契約解除をすることができません。
本問は「買主が履行に着手していても」という記述から買主は履行に着手していることを前提に考えます。
したがって、履行に着手している買主の相手方(売主)は手付の倍額を返しても(償還しても)契約解除はできません。
手付による解除ができなくなるのは、契約の相手方が契約の履行に着手した時点以降である。 自らが履行に着手していても、相手方が履行に着手していなければ、解約手付による解除をすることができる。問8
宅地建物取引業者であるAが、自らが所有している甲土地を宅地建物取引業者でないBに売却した場合、甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。(2008-問9-2)答え:正しい
本問は「売主の担保責任」の問題ですが、この分野でも「契約解除」は出てきます!
契約解除は広い分野で関連してくる部分なので、一緒に勉強しておきましょう!
抵当権のついた物件の売買をし、その後、抵当権の実行により所有権を失った場合、抵当権が付着していることについて買主の善意・悪意関係なく、契約解除ができます。したがって、本問は買主が悪意ですが、解除できます。問9
Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約が締結された。 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。(2016-問6-4)答え: 正しい
AがBに売却した土地に抵当権が設定されていたので、抵当権付着物売買です。
A→B
抵当権付着売買については、買主Bが善意でも悪意でも「損害賠償請求」も「契約解除」もできます。問10
宅地建物取引業者でも事業者でもないAB間の不動産売買契約において、買主Bが不動産に瑕疵があることを契約時に知っていた場合や、Bの過失により不動産に瑕疵があることに気付かず引渡しを受けてから瑕疵があることを知った場合には、Aは瑕疵担保責任を負わない。(2007-問11-3)答え:正しい
「買主Bが過失により瑕疵があることに気づかず」という記述から、買主Bは契約時に有過失だということが分かります。買主Bが売主Aに対して瑕疵担保責任を追及するためには、買主Bが契約時に善意無過失であることが要件です。したがって、買主Bは売主に対して責任追及することができません。(損害賠償請求も契約解除もできない)問11
宅地建物取引業者でも事業者でもないAB間の不動産売買契約において、買主Bが不動産に隠れた瑕疵があることを発見しても、当該瑕疵が売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないような瑕疵である場合には、Aは瑕疵担保責任を負わない。答え:誤り
隠れた瑕疵があり、買主が瑕疵について善意無過失であれば、買主は売主に対して責任追及ができます。
具体的には、「損害賠償請求」と「契約解除」ができるのですが、瑕疵により契約解除ができるのは、買主が購入した目的を達成できない場合に限ります。
瑕疵によって売買契約の目的を達成できないとは言えない場合、買主は契約解除はできませんが、損害賠償請求はできます。
したがって、「Aは瑕疵担保責任を負わない」という記述は誤りです。問12
買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。(2005-問9-1)答え:誤り
全部が他人物の場合であっても、売買契約した以上、売主は買主に対して、当該他人物の目的物を引渡し義務を負います。 もし、引渡しができないのであれば、売主は契約不適合責任を負います。
※買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知っていたかどうかによって、結論は、異ならない。問13
買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使(競売)によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。(2005-問9-3)答え:誤り
抵当権の実行によって所有権を失った場合、善意・悪意関係なく、契約解除と損害賠償請求ができます。これは、抵当権につき悪意の買主であっても、売買代金等で、売主が抵当権を抹消してくれるだろうと、期待するのが通常と考えるからです。
※買主が、抵当権の存在を知っていたかどうかによって、結論は、異ならない。問14
Aが、BからB所有の土地付中古建物を買い受けて引渡しを受けたが、建物の主要な構造部分に欠陥があった。Aが、この欠陥の存在を知らないまま契約を締結した場合、Bの担保責任を追及して契約の解除を行うことができるのは、欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができない場合に限られる。(2003-問10-2)答え:誤り
契約内容に適合しない瑕疵(欠陥)があった場合、売主は契約不適合責任を負います。 つまり、買主は、売主に対して、欠陥を修復するように催告し、一定期間経過しても修繕をしない場合、買主Aは、契約解除をすることができます。そして、これは「目的を達成することができない場合」に限られません。目的を達成できたとしても契約解除は可能です!
※契約を解除することができるのは、「契約をした目的を達成することができないとき」に限られない。令和2年の民法改正により大きく変わった点である。問15
Aが、Bに建物を売却し、代金受領と引換えに建物を引き渡した後に、Bがこの建物に隠れた瑕疵があることを発見したが、売主の瑕疵担保責任についての特約はない。この場合、Bは、この瑕疵がAの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り、この瑕疵に基づき行使できる権利を主張できる。(2002-問9-1)答え:誤り
売主の瑕疵担保責任は売主が無過失であっても、買主が善意無過失であれば瑕疵担保責任を負わなければなりません。
つまり、買主Bは売主Aの落ち度(責めに帰すべき事由)を証明しなくても、隠れた瑕疵に善意無過失であれば、責任追及をすることができます。
「瑕疵に基づき行使できる権利」とは「損害賠償請求」や「契約解除」を指します。問16
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、本件建物に存在している瑕疵のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合、AはBとの契約を一方的に解除することができる。(2014-問6-4)答え:正しい
建物の請負の場合(請負の目的物が建物の場合)も契約不適合責任のルールが適用されます。そのため、契約に適合しない瑕疵があった場合、AはBとの契約を一方的に解除することができます。問17
請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合せず、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合であっても、Aは原則として請負契約を解除することができない。(2006-問6-3)答え:誤り
仕事の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、請負契約を解除することができます。
※令和2年改正前の民法と異なり、現在の民法では、建物その他の工作物についても、その他の物と同様に扱います。
※「目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合」という記述には、特に意味がありません。問18
AがBに対して建物の建築工事を代金3,000万円で注文し、Bがこれを完成させた。請負契約の目的物たる建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、Aは当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。(2006-問6-2)答え:正しい
※令和2年改正前の民法と異なり、現在の民法では、建物その他の工作物を目的とする請負契約についても、契約の解除が認められています。請負契約を解除することも、損害賠償を請求することも可能なのです。このため、「建替費用相当額の損害賠償」に特別な意味がなくなっています。問19
AがBに対して建物の建築工事を代金3,000万円で注文し、Bがこれを完成させた。請負契約の目的物たる建物に瑕疵がある場合、瑕疵の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、瑕疵の修補を請求しなければならない。(2006-問6-1)答え:誤り
請負契約の目的物たる建物に瑕疵がある場合、注文者Aは、損害賠償請求・瑕疵の修補請求のどちらもできます。(債権譲渡) 問1
Aが、Bに対する債権をCに譲渡した。 AのBに対する債権に譲渡禁止の特約があり、Cがその特約の存在を知りながら債権の譲渡を受けていれば、Cからさらに債権の譲渡を受けた転得者Dがその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がない場合でも、BはDに対して特約の存在を対抗することができる。(2016-問5-1)答え:誤り
まず、AB間で譲渡禁止特約をしているにも関わらず、AはC(悪意)に債権を譲渡し、さらにD(善意無重過失)に譲渡しています。債権譲渡禁止特約は、債権の譲受人が特約の存在を知らず(善意)、また、知らないことに重過失がない場合(無重過失)には、債務者Bは債権の譲受人に対して、無効を主張することができません。したがって、Bは債権の譲受人であるDに対して譲渡禁止特約について対抗することはできません。問2
Aが、Bに対する債権をCに譲渡した。 AのBに対する債権に譲渡禁止の特約がなく、Cに譲渡された時点ではまだ発生していない将来の取引に関する債権であった場合、その取引の種類、金額、期間などにより当該債権が特定されていたときは、特段の事情がない限り、AからCへの債権譲渡は有効である。(2016-問5-3)答え:正しい
まだ発生していない将来の取引に関する債権であっても、取引の種類、金額、期間などにより特定されていれば、債権譲渡の対象にすることができます(判例) したがって、AからCへの債権譲渡は有効です。問3
AがBに対して1,000万円の代金債権を有しており、Aがこの代金債権をCに譲渡した場合において、AがBに対する代金債権をDに対しても譲渡し、Cに対する債権譲渡もDに対する債権譲渡も確定日付のある証書でBに通知した場合には、CとDの優劣は、確定日付の先後ではなく、確定日付のある通知がBに到着した日時の先後で決まる。(2011-問5-4)答え:正しい
債権の二重譲渡があり、どちらも確定日付のある証書による通知または承諾を有している場合、債権の譲受人であるCもDも対抗要件を満たしています。
この場合どうなるか?
その勝ち負けは通知の日付の先後ではなく、通知の到達の先後によって決まります。問4
AがBに対して1,000万円の代金債権を有しており、Aがこの代金債権をCに譲渡した場合において、AB間の代金債権には譲渡禁止特約があり、Cがその特約の存在を知らないことにつき重大な過失がある場合には、Cはこの代金債権を取得することはできない。(2011-問5-1)答え:誤り
債権に譲渡禁止特約がついていても、原則、譲受人は有効に債権を取得できます。
※ただし、譲渡制限の意思表示につき、譲受人Cが悪意又は重過失がある場合、債務者Bは、Cに対する履行を拒絶することができます。問5
AがBに対して1,000万円の代金債権を有しており、Aがこの代金債権をCに譲渡した場合において、AがBに対して債権譲渡の通知をすれば、その譲渡通知が確定日付によるものでなくても、CはBに対して自らに弁済するように主張することができる。(2011-問5-2)答え:正しい
債権譲渡の債務者に対する対抗要件としては、
①譲渡人から債務者への通知
②債務者による承諾
という2つの方法があります(民法467条1項)。これらのいずれかがあれば、債権の譲受人は債権譲渡を債務者に対抗することができるわけです。
※対抗要件として「確定日付ある証書」が必要になるのは、債務者以外の第三者に対抗する場合です。問6
指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各債権譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各債権譲受人は、債務者に対し、債権金額基準で按分した金額の弁済請求しかできない。(2007-問9-1)答え:誤り
債権譲渡の場合、譲受人が債務者に対抗する要件と言うのは、 以下の通りです。
① 譲渡人から債務者への通知
② 債務者が、譲渡人または譲受人どちらかに対して譲渡を承諾
二重譲渡のように、第三者に対抗する要件と言うのは、 以下の通りです。
① 譲渡人から債務者へ確定日付のある証書による通知
② 債務者の確定日付のある証書による承諾
債権が二重に譲渡され、そのどちらにも確定日付のある債権譲渡通知が債務者の元に到達したときは、到達の先後で決します。
もし、どちらかに確定日付が無ければ、到達の先後に関係なく、ある方の勝ちとなります。 (確定日付の先後は関係ありません)
確定日付+到達の先後と言うのが債権譲渡の場合の第三者に対する対抗要件となります。しかし、問題文は、両者とも確定日付があり、到達も同時となっていますから、優越をつける状態ではありません。
優越が付かないのですから、債務者はどちらか好きな方に全額弁済すればいいことになるのです。弁済を受けられなかった譲受人は、二重に譲渡した譲渡人が悪いのですから、譲渡人に対して損害賠償を請求することになるだけです。
よって問題文は、誤りとなります。問7
指名債権の性質を持つ預託金会員制ゴルフクラブの会員権の譲渡については、ゴルフ場経営会社が定める規定に従い会員名義書換えの手続を完了していれば、確定日付のある債権譲渡通知又は確定日付のある承諾のいずれもない場合でも、ゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗できる。(2007-問9-2)答え:誤り
これも、難しく書いていますが、要は、ゴルフ会員権を二重に譲渡した場合のことを言っています。そして、問題文の冒頭に指名債権の性質を持つゴルフ会員権と言っていますから、債権を二重に譲渡した場合の問題だと言うことです。
肢1の解説でもお話ししたように、債権譲渡の第三者への対抗要件は、確定日付+到達の先後です。問題文には、確定日付がない場合でも、第三者に対抗できるとしていますから、誤りとなります。問8
契約時点ではまだ発生していない将来債権でも、発生原因や金額などで目的債権を具体的に特定することができれば、譲渡することができ、譲渡時点でその債権発生の可能性が低かったことは譲渡の効力を直ちに否定するものではない。(2007-問9-3)答え:正しい
契約時点では、将来発生が不確実な債権であっても、発生原因や金額などで目的債権を具体的に特定することができれば、譲渡することができる。
たとえ、債権譲渡契約の締結時において目的債権の発生の可能性が低かったとしても、債権譲渡の効力は左右されない。問9
指名債権譲渡の予約契約を締結し、この予約契約締結の事実を確定日付のある証書により債務者に通知していれば、予約の完結によりなされる債権譲渡の効力を債務者以外の第三者に対抗することができる。(2007-問9-4)答え:誤り
債権譲渡の予約について、確定日付のある債務者に対する通知や債務者の承諾があっても、予約完結(本契約)による債権譲渡の効力を第三者には対抗できません。対抗するためには予約の完結後、再度、承諾または通知が必要です。
債権譲渡の予約に関する通知・承諾があったとしても、このことにより債務者が知ることができるのは、「予約完結権の行使により債権の帰属が将来変更される可能性」に過ぎない。
逆にいえば、「債権の帰属に変更が生じた事実」を認識できるわけではない。
したがって、予約についての通知・承諾があるからといって、予約完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない(最判平13.11.27)。問10
Aは、Bに対して貸付金債権を有しており、Aはこの貸付金債権をCに対して譲渡した。貸付金債権に譲渡禁止特約が付いている場合で、Cが譲渡禁止特約の存在を過失なく知らないとき、BはCに対して債権譲渡が無効であると主張することができない。(2003-問8-1)答え:正しい
譲渡禁止特約(譲渡制限の意思表示)のある債権も譲渡の対象となり、その債権譲渡は有効である。
譲受人が悪意だったり、重過失がある場合であっても、このことに違いはない。
※譲受人が譲渡制限の意思表示について悪意又は善意でも重過失がある場合、債務者は、譲受人に対する債務の履行を拒むことができる。問11
Aは、Bに対して貸付金債権を有しており、Aはこの貸付金債権をCに対して譲渡した。Bが債権譲渡を承諾しない場合、CがBに対して債権譲渡を通知するだけでは、CはBに対して自分が債権者であることを主張することができない。(2003-問8-2)答え:正しい
債権譲渡について、譲受人Cが債務者Bに対抗するには「債務者Bの承諾」もしくは「譲渡人Aからの債務者への通知」が必要です。
本問は譲渡人Aから通知しているのではなく、譲受人Cから通知しているため、Cは債務者Bに対抗できません。問12
Aは、Bに対して貸付金債権を有しており、Aはこの貸付金債権をCに対して譲渡した。Aが貸付金債権をDに対しても譲渡し、Cへは確定日付のない証書、Dへは確定日付のある証書によってBに通知した場合で、いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき、Bへの通知の到達の先後にかかわらず、DがCに優先して権利を行使することができる。(2003-問8-3)答え:正しい
債権の二重譲渡があった場合、譲受人が債務者以外の第三者に対抗するためには、確定日付のある証書による通知または承諾が必要である。
本肢では、(1)Cへは確定日付のない証書(2)Dへは確定日付のある証書で通知されているから、DがCに優先する。
※通知の到達の先後は結論に無関係である。問13
Aは、Bに対して貸付金債権を有しており、Aはこの貸付金債権をCに対して譲渡した。Aが貸付金債権をEに対しても譲渡し、Cへは平成15年10月10日付、Eへは同月9日付のそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合で、いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき、Bへの通知の到達の先後にかかわらず、EがCに優先して権利を行使することができる。(2003-問8-4)答え:誤り
債権の二重譲渡の場合は、確定日付のある証書が対抗要件になります。記述は、CもEも共に、確定日付のある証書をBに送っていますから、この時点では、勝者を決めることはできません。
決するのは、Bへの通知の到達の先後となります。
確定日付の先後は関係ありません。
確定日付は、あくまでもあればいいだけの話です。
よって、記述は「Bへの通知の到達の先後にかかわらず」となっていますから、誤りとなります。(債権譲渡と相殺) 問1
AがBに対して1,000万円の代金債権を有しており、Aがこの代金債権をCに譲渡した場合において、BがAに対して期限が到来した1,000万円の貸金債権を有していても、AがBに対して確定日付のある譲渡通知をした場合には、BはCに譲渡された代金債権の請求に対して貸金債権による相殺を主張することができない。(2011-問5-3)答え:誤り
債権者Aが債務者Bに何か売って、その代金に関する債権(代金を払ってと言える権利)を持っています。
さらに、通知前から債務者Bが債権者Aに対して反対債権を持っていた場合が本問です。
この場合、通知前から持っていた反対債権が、たとえ通知後に弁済期が到来し相殺適状になるものであっても、譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者Bはその債権をもって債権の譲受人Cに相殺を主張できます。
※令和2年以降の改正民法では、債務者が債権譲渡について異議をとどめないで承諾した場合でも結論は同じです。問2
Aが、Bに対する債権をCに譲渡した。 Aに対し弁済期が到来した貸金債権を有していたBは、Aから債権譲渡の通知を受けるまでに、異議をとどめない承諾をせず、相殺の意思表示もしていなかった。その後、Bは、Cから支払請求を受けた際に、Aに対する貸金債権との相殺の意思表示をしたとしても、Cに対抗することはできない。(2016-問5-4)答え:誤り
弁済期到来前に受働債権の譲渡があった場合でも、債務者Bが譲渡通知の当時すでに弁済期の到来している反対債権(Aに対する債権)を有するときは、譲受債権者Cに対し相殺をもって対抗することができます(判例)。
したがって、Bは、Cの支払い請求に対して、相殺で対抗することができます。問3
Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し賃料債権を有している。AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務を相殺することはできない。(2011-問6-4)答え:誤り
これは債権譲渡と相殺の対抗関係の問題です。
つまり、反対債権を取得したのが、譲渡通知の前なのか後なのかで優劣を判断します。
通知前にBは相殺適状であったわけなので、もちろん反対債権を取得していたということです。
なので、BはFに対して相殺を主張できます。(債権者代位) 問1
民法第423条第1項は、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。 ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。」と定めている。 これに関し、債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者は、自己の債権を保全するため、民法第423条に基づく債権者代位権を行使することができる場合がある。(2010-問7-1)答え:誤り
債務者が自ら権利を行使をしているときは 債権者代位権を行使できません。
債権者代位権を使うときって言うのは、債務者本人に請求してもお金などの債権を支払ってもらえそうにない状態だから、その債務者が持つ他の債権から回収しようと言う時に使うものです。
と言うことは、債務者本人が無資力状態で、かつ、債権の弁済期が来ていないと 債権者代位権を行使することができないと言うことがわかっていただけると思います。
これを踏まえて問題文を見てみると、債務者が何らかの権利を行使しているのですから、ひょっとしたらその権利を行使した結果、債務者にお金などが入って来るかも知れません。と言うことは、この債務者は、まだ無資力の状態ではないと言うことになります。
となれば、債権者代位権を行使することが、できないとなりますから、問題文は間違いとなります。
もっとシンプルに考えると、そもそも債務者本人が、自分の持っている権利を行使しているのに、債権者だからと言って、他人が主張している権利を横取りすような行為に違和感を感じることができれば、問題文は間違いだと判断がつくと思います。問2
未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有権保存登記手続を行うことができる場合がある。(2010-問7-2)答え:正しい
未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有権保存登記手続を行うことができる場合がある。未登記の建物をダイレクトに、所有権移転登記はできません。「表示の登記」をして、その建物は、誰が建てたのかを示す、「保存登記」をして、はじめて「所有権移転登記」ができます。「表示の登記」は、登記官の職権で行うことが可能ですが、「保存登記」は、問題文の売主がしなければいけませんし、「所有権移転登記」も、売主買主が共同し行わなければ、本来登記ができないものです。
ここでもし、売主が登記申請する以外に登記する方法がないとしたら、売主のやりたい放題で、最悪の売主でしたら二重売買とかしてしまいそうです。こういう事態を避けるため、非協力的な売主に対しては、問題文のように、買主は売主に代位して所有権保存登記手続を行うことができます。問3
建物の賃借人は、賃貸人(建物所有者)に対し使用収益を求める債権を保全するため、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある(2010-問7-3)答え:正しい
建物の賃借人が、賃貸人たる建物所有者に代位して、建物の不法占拠者に対しその明渡を請求する場合には、直接自己に対して明渡をするよう請求することができるので、本問は正しいです。
あなたがアパートを借りていたと仮定して、そのアパートに何者かが侵入していた場合、「出て行け!」と言いますよね。「ここは、俺(私)が借りているアパートだ!」って言いますよね。と考えると、問題文は正しいと判断できると思います。問4
抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。(2010-問7-4)答え:正しい
抵当権者は、抵当不動産の価値の低下を防ぐために、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができます。
したがって、本問のように抵当権者は不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合があります。
抵当権者は、債務者から債権を回収できないときは、その不動産を売ってその代金から債権を回収しようと考えて、その不動産に抵当権を設定しています。その不動産を売る段階になったとき、暴力団等の組員がその不動産に居座っていたら、あなたなら買いますか?
買うとしても、その組員を追い出すためのお金の計算をして、その分を差し引いた金額でなければ、まず買わないと思います。これでは、抵当権者は債権の回収ができないと言うことになるのです。
ですから、抵当権者は目的不動産の価値を下げるような不法占有者に対しては、問題文のように、直接自己に明け渡すよう請求することができるのです。
よって問題文は、正しいとなります。問5
Aが妻Bに不動産を贈与した場合、Aの債権者Cは、Aの夫婦間の契約取消権を代位行使することができる。(1995-問5-1)答え:誤り
民法423条1項
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
債務者の一身に専属する権利(夫婦間の契約取消権・生活保護費の請求権等、その者にしか行使できない権利)についは、債権者代位ができないとされています。問6
DのEに対する債権の弁済期が到来していない場合、自己の債権を保全するため、Dは、裁判上の代位によりEのFに対する債権を行使することができる。(1995-問5-2)答え:正しい
債権者代位権を行使するためには、原則として債権の弁済期が到来していることが必要です。
ただし、例外的に、裁判上の代位と保存行為は弁済期が到来していなくても債権者代位権を行使できます。問7
土地がGからH、HからIへと譲渡された場合において、登記がなおGにあるときは、Iは、HのGに対する登記請求権を代位行使することができる。(1995-問5-3)答え:正しい
判例によると、 不動産の購入者であるIは、売主Hに代位して、Gに対する移転登記請求権を行使することができます。この場合(登記請求権の場合)、Hが無資力でなくとも、代位権を行使することができます。
G→H→Iと譲渡されています。
Iは、本来、登記を早く、自分に直接登記を移転しろ!と言える立場です。
ただ、不動産登記法では、登記は物権変動の過程を忠実に公示する必要があるとされているため、原則として中間省略登記(Hを飛ばしてIに移転登記すること)は禁止となっています。
ですから、Hが何も動いてくれないようなら、IがHに代位して、G→Hの移転登記の代位を認めてやらないと、Iは移転登記を受けられないばかりか、所有権も失ってしまう可能性があります。従って、Iは、HのGに対する登記請求権を代位行使することができるとなります。問8
Jの所有地をKが賃借している場合において、Lが不法占拠したときは、Kは、Jの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することができる。(1995-問5-4)答え:正しい
土地の賃借人であるKは、賃貸人Jに代位して、不法占拠者Lに対す妨害排除請求権を行使することができます。いわゆる債権者代位権の転用事例である。
この場合(賃貸人の妨害排除請求権の場合)、Jが無資力でなくとも、代位権を行使することができます。本来、妨害排除請求権は、所有権の円満な状態が妨害されている場合に所有者が妨害者に対し、物の返還、妨害の排除及び妨害の予防を請求するというものです。所有者から賃借して土地を占有しているにすぎない賃借人は行使することができないのが原則です。
ですが、例えば、あなたが駐車場を借りているとします。その借りている駐車場に、誰か他の車が停まっていたら、その車をどかすために警察に電話したりして、無断駐車の車を排除しようとするのが、ごく自然なことだと思います。
ですから、判例においても、賃借人Kは、Jの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することができるとしているのです。なお、この場合も賃貸人Jの無資力要件は不要とされています。
Other Quizlet sets
Boards cardiovascular
94 terms
1/2